平助が屯所に戻ってから

聞こえた噂







『土方副長に女が出来た』








モテるのは、しっていたが
ちゃんとした恋仲を作ってなかった
その土方の相手は、君菊という
とても可愛い島原の娘



沖田に確かめてみたかったが



きっと、噂は本当だろうと
聞くことを辞めた




自室でひとり、天井を見る





〝俺って、勝手だなぁ…
藤堂平助でいたいのに…
土方さんの女でもいたいなんて…
もう、土方さんに抱かれることもない…
なのに… 俺を好きでいて欲しかった
他の女に触れて欲しくなかったなんて…〟




「馬鹿…」






「平助… それ、独り言かいな?
それとも、俺に言うてんのか!?」



「烝が様子見に来てるのは、気づいてる
これは、自分への独り言!
なんで、こんな怪我したのかなぁって」



「ホンマ、ちゃんと鉢金つけてたら
せぇへん怪我やもんな?
暑いのに、いっつも肌隠してるさかい
不思議やってん
汗かきなのに、なんでかなって…
すまん、副長から火傷の事聞いてん
そない酷いんか?
俺、医者やし診せてくれへん?」



「陽乃…医術学んでて
陽乃が診てくれてるから
俺の体は、陽乃先生に任せてる」



「さよか… それで、陽乃は平助を診るって
いつも言うてんのやな」



「そう!」



「もうすぐ、陽乃が包帯替える頃やろ?
傷口、見たらあかんか?」


「見るだけなら、良いよ
陽乃が緊張して手元狂ったら
一発殴らせろよ!」


「あははっ ホンマ、すぐ手を出す!」


「あははっ 冗談だって!」





陽乃が包帯を外すと
山崎がジロジロと傷口を見る



「めっちゃ上手いやん」


「/////本当!?嬉しい!!」


「陽乃は、裁縫得意だもんな」


「あほ!裁縫より、難しいわ!」


「そうなの?」


「すっごく丁寧にしたんです!!」


「顔まで隠さなくちゃいけなくなったら
大変だもんなぁー」


「まあ!」


「のん気な奴やな
しかし、これは凄いで!!
月日が経つと消えるんちゃう?」


「そんなの見てわかるのか?」


「俺くらいになるとわかるんや!
まあ、わかっても不器用やさかい
こんな繊細なことはでけへん!」


「山崎さんは、大勢を診てたからですよ
私は、平助様に集中させて貰いましたから
平助様のお顔に傷が残らないように」


「……なんや、惚気かいな
お邪魔にならんよう、下手に去ります!」


「またな!烝!」


「とめんのかい!」


「ふふふっ 仲の宜しいこと」