5月。
よく晴れた朝僕はいつものように薔薇屋敷の前の坂を自転車で下る。そして赤ポストの近くで止まる。
(あと少し…)
父からもらった古びた腕時計を確認し薔薇屋敷の2階の窓に目をやる。
窓が空いて薔薇のお嬢の姿が見えた。如雨露片手に窓辺の薔薇に水をやるお嬢。遠くからで顔はよく見えないが美しい。薔薇のお嬢はさっと水をやるとまた窓の内側に消えていった。
そして僕もまた自転車に跨がり坂を下った。
これが僕の毎日の日課。薔薇のお嬢に僕は恋をしている。