「んで・・・君は両親に三億円で売られたの、分かる?
 陽菜ちゃんが碧斗と結婚することで
 ご両親が借金の取立てから開放されるの
 理解出来たらサインしてね?
 それ以外の選択肢は無いんだからね?」



何度も何度も同じ説明を聞いているはずなのに
頭に全く留まってはくれなくて
それでも・・・

目の前の書類を見るだけで
ここに連れて来られた意味は理解できた


要するに借金のカタに売られたのだ


実の両親に・・・


明日は高校の卒業式

ほんの1時間前まで
アルバイトをしていた自分


まさかこんな目に遭うとは考えもしなかった


ハァと肩が下がる程
わざとらしくため息を吐き出すと
意を決して声を出した


「私は高校生で未成年です。
 例え両親に借金があったとしても支払いの義務はないはずです」


「なんだと!」



正面から睨みつける目に
獰猛な怒りの炎が灯った