「これが赤ちゃんですよ」


小さな命に目が釘付けになる

また胸に広がるのは温かな気持ち・・・


陽菜と居るだけで
色の無い俺の人生が
鮮やかに広がって行く

家族から捨てられた俺が
“親”になれるのだろうか・・・

陽菜との未来を想うだけで
なんでも出来そうな気がするのも
全部陽菜のお陰なんだろうな



・・・幸せだ



鼻の奥がツンとして
味わったことのない感情がこみ上げる
それに飲まれないよう
無理矢理笑顔を作った









「これから気をつけることを教えろ」


女医が並べる尤もらしい話に
聞き入る陽菜の背中を擦りながら
俺も同じように耳を傾けた


診察が終わると有無を言わせず
陽菜を抱き上げ車へと戻る

コトンと俺の肩に頭をつける陽菜に
また口角が上がった


らしくないなと呟いて

潰さない程度に腕の中に閉じ込めると屋敷へと戻った



「「「おめでとうごぜいやす」」」



一平がバラしたのだろう
お祝いの言葉で溢れる若衆達に出迎えられて
思わず緩みそうになる頬を堪えた


陽菜を抱えて寝室へ戻ると

幾分気分が戻った陽菜は
ベッドの上で向き合うように座った


「碧斗さん、お医者さんに言われたように
 寝てばかりいると胎教に良くないので
 普段通りにさせてください」


抱き上げて一歩も歩かせなかったことを言っているのか

お腹に子供が出来ると強くなるのか?
何度も甘やかすなと文句を言う


なんだか失敗したかと
少し拗ねる背中を

陽菜がそっと抱きしめた


「碧斗さん・・・
 お誕生日おめでとうございます
 プレゼント買えなくてごめんなさい」


「あ、いや・・・それは」


無理やりアルバイトを辞めさせた所為だと言いたかったのに


「碧斗さん、愛してます」


陽菜から聞こえた声に
胸が撃ち抜かれた



「・・・っ」


・・・クソッ

また俺の負け


「プレゼントならここにいる」


陽菜のお腹に手を当てて
キザな台詞を吐きだした


「私が貰ったプレゼントなのに?」


そう言って俺を見上げる陽菜に
遂に気持ちが抑えられなくて

歯止めが利かず
腕の中に閉じ込めた


「愛してる、陽菜」


「はい」