何度揺すっても起きない碧斗さんを置いて
奈美さんと2人で花壇の水やりに出た

もちろん戻った時には碧斗さんは起きていて
不機嫌な腕の中へ囚われる


「陽菜」


不機嫌の原因は
黙って腕の中を抜け出したことより
お婆様からのお誘いにあった


「ババア余計な誘い入れやがって」


初めて見るムキになる碧斗さんを
不謹慎ながら可愛いと思えて
クスッと笑って頬を寄せるのに


「無理に行かなくていいからな
 なんなら今すぐ断るぞ?」


拗ねた子供みたいな反応が返ってきた

碧斗さんに機嫌を直して欲しいけれど

・・・断りたくない


「碧斗さん、ごめんなさい
 私、お婆様の所へ行きたい
 だって・・・家族、でしょ?」


ポツリと出した言葉に


「あぁ」
と短く返事をくれた碧斗さん


「その代わりこれを・・・」


三粒のダイヤが揺れるネックレスを着けられた


「迎えは俺が行くから」


揺れる視線を合わせると
ゆっくりと唇が重なった

惜しむようなキスを
無理矢理離した碧斗さんは


「クソッ、支度して良い」


その場でクルリと背を向けた

奈美さんに手伝って貰い
支度を済ませると


「嫌なら行かなくていいぞ」
「なんだってんだあのババア」


最後まで子供みたいな悪態をつく
切ない顔の碧斗さんと玄関で別れた


いつも碧斗さんが乗っている車に
護衛さんと一平さんまで車に乗り込んだ


「碧斗のあの顔見た?
 もう二度と会えないみたいな
 この世の終わりの顔してた」


ククと笑う一平さん


「陽菜ちゃん猟奇的に愛されてるね」


堪えきれずに笑う一平さんに

苦笑いしか返せなかった


でも・・・

初めて碧斗さんの腕から出され
一人で出掛ける外は

右側が寂しくて

こんなに心細いとは


思ってもみなかった