「どうした?」


不意に抱かれた肩に
妄想の中に入ってしまったと力が入り
誤魔化すように言葉を並べる


「外の景色久しぶりだと思って」


「そうか」


「はい」


「身体しんどいなら帰るぞ?」


「え?大丈夫です」



乗り気ではなかったけれど
連れ出して貰えた半年ぶりの外の景色が
灰色になりそうな予感


「碧斗!陽菜ちゃんを困らせるな
 鳥じゃないんだから・・・
 いつまでも籠に入れとくわけにいかないだろ」


一平さんが助け舟を出してくれるのに


「お前は黙ってろ」


顔を覗き込む碧斗さんの表情は真剣で

なんだか大袈裟な話になってきたと

碧斗さんに心配されないように
いつもより笑顔に気を付ける

少し探るような表情のままの碧斗さんも

私の笑顔に絆されたのか
帰ろうと口にすることはなくなった



けれど・・・今度は・・・


車が停車する度に敷居の高そうな店に何度も入ることになった

着せ替え人形のように
碧斗さんの前で何着も袖を通したり

高そうな石が煌く指輪やネックレスを試着したり

気がつけば
洋服やバッグ、アクセサリー類で
トランクは埋め尽くされ

私の表情ひとつで帰ろうとした割に
まるで馴染みの店へ私を紹介して回るような・・・

出掛けた意図が
分からないでいた