三億円の借金は
実際には一億円というところだろう

ま、それにも金利が乗せられているから

陽菜の両親が作った借金なんて
5、6千万円がいいところ

今回白夜は金利無しの元本で
手打ちにしてくれた

まだ陽菜の写真しか見ていない段階で
『結婚祝い』だと笑った理樹は
俺が陽菜を気に入り結婚まですると読んでいたのだろう

その思惑に乗るのもシャクに触るが
有り難く受け取った

勿論、大金を動かしたからには
確実に陽菜を手に入れる



そのために・・・


『命と引き換えにするか』


『臓器を差し出すか』


いつもより非道な言葉を
一平が放った瞬間


『・・・娘はどうでしょう?』


迷いなく娘を差し出した哀れな両親からは

娘の人生への配慮は微塵も感じられなかった


『娘を見てくる』


二人を待たせたまま態々
バイト先の中華料理店へ出向いたのは

理樹から受け取った写真の中の陽菜を見るためだった

そこで借金のカタにされるとは考えもしないであろう
可愛い高校生の陽菜を見た

値踏みをするはずの邪な気分は

どこか儚げで可愛らしい
今時珍しい純心無垢な姿に消え

どうしてもこの腕の中へ閉じ込めたい衝動に駆られた


・・・らしくないな


時折見せる笑顔を
独占したくなった

ただそれだけの理由で
卒業式にも出席させなかった


『私、2、3週間家に帰りませんからその間に連れて行って下さい』


大事な娘を差し出すことを
何でもないことの様に笑った母親に

自分の闇と重ねて無性に腹が立った



そんな糞親のことを
陽菜に話すつもりはないけれど


辛い思いをする分だけ
甘やかしてやろうと思ったことだけは確かだった




side out