「・・・やっ」




拒絶しようとする両手を
頭の上で掴まれる

間近で見た切れ長の目に
怯えた自分が映り

誤魔化すように瞼を閉じた

息がかかる程の距離で
呼吸だけを早くした私の鼻先に
チュッと音を立てて口付けを落とした碧斗さん

つけたままの唇が
僅かに動くと

聞こえたのは



「許さないよ」



低くて甘い声だった



ゆっくり鼻先から離れた唇が
スライドして唇と重なる

優しく重ねられた唇の熱で
全身の毛穴が開くような感覚が襲う

それは・・・
余りに心地よくて
張り詰めた気持ちを緩ませる


重ねられた唇だけで
気分が穏やかになるのを感じ


力の抜けた両手から
外された碧斗さんの手は

離れることなく
私の指と絡められた





不安な気持ちは
芽生えてしまった碧斗さんへの想い

気付かないフリを続ける私には
どうすることも出来ない

それでも
心まで解かされるような口付けひとつで

流れ出す涙は


碧斗さんに届くだろうか・・・


触れている肌から伝わる鼓動は
頭の中から不安を払拭し

安心感をもたらす

絡めた指はそのままに
反対の手がワンピースのボタンを少しずつ外し

火照り始めた肌を全て露わにした頃には

全身が上気し
呼吸が甘く色付いていた


何度も何度も甘く落される口付けは
外されることなく


身体の疼きを膨らませ


碧斗さんの指がなぞる肌は
それを追いかけるように跳ね


堪らず鼻から甘い声が漏れる


それは・・・

甘えているような・・・
お強請りするような・・・

碧斗への止められない想いのようで

いつしか

自制することを諦めた


やがて・・・唇が離れ


離れる熱を追いかけるように
潤む瞳を碧斗さんへ向けると

切れ長の目が緩んで見えた


・・・ドクンっ


間近の目が笑っただけで
心臓を射抜かれたように動悸が打つ

それを確認しながら
碧斗さんの胸へ顔を埋めた