寝返りを打つタイミングで
ボンヤリと見えたシルエット



・・・碧斗さん


近くて遠い存在が無防備な姿を見せてくれる

そのことが胸の中に芽生えた燻る気持ちを温かくする


長いまつ毛・・・
薄い唇・・・


ラフに下ろされた髪の隙間から見えるキリッとした眉


上下する胸を見ながら
触れたい衝動に駆られる


そっと伸ばした手は
碧斗さんに触れる前にギュッと握って戻した

私が触れて良い訳がない

でも・・・
・・・触れてみたい


頭だけを傾けて
肩口におデコをつけてみた


たったそれだけで
胸が苦しくて・・・でも
酷くホッとして


細めた目をゆっくり閉じた


このまま朝まで眠りたい・・・


初めて自分から碧斗さんに触れた
心地よい時間を


「・・・っ」


邪魔するような
微かな匂いをまた感じ取ってしまった


「・・・っ」


急に鼓動が強く打ち
下唇をギュッと噛み締めた


・・・私は借金のカタ


私如きに三億円が帳消しに出来るとは思っていない

だから・・・


夫婦になったとはいえ心は伴わない


そう・・・


・・・借金のカタ・・・



理解しているはずの想いが
感情を乱す

鼻の奥がツンと痛み


閉じたままの瞼から涙が流れた


今だけ


今だけ・・・


・・・触れさせて下さい