side 碧斗





・・・またか


襲名披露を間近に控え
傘下の組からわかり易く媚を売られる

それは・・・

頼んでもいない貢物が届くこと


あくまでも“貢物”として届く女達を
勿論“モノ”として扱う

しかし・・・
タダで返すはずも無く

陽菜では試せない事を
全てやらせてみる

けれど・・・

・・・・・・飽きる


ベッドに寝転がり
紫煙の向こうに思いを巡らせる・・・



・・・花壇気に入っただろうか



「こちらの胸が苦しい涙でした」



一平に届いた奈美からの報告メールの
最後の一行から目が離せず

半日で作らせた花壇
家に閉じ込めたストレスだろうと踏んで

少しの自由を与えることにした

そうやって新しい楽しみを与えているのに

抱きしめる度に
自分を見る陽菜の瞳が潤む


・・・・・・何故だ


まさか自分の身体に残る僅かな女の匂いを
陽菜が嗅ぎとっているとは気づかなかった









「おかえりなさいませ」



出迎えた奈美から報告を受け
陽菜の眠る寝室へ入った




広いベッドで小さく丸まって寝る様子を見ながら

また少し口元が緩むのが分かって
らしくないなとネクタイを緩めた


ベッドが軋む音を立てないように近づくと


こちらに背を向けた陽菜の顔を
小さく上下する肩越しに覗き込んだ



「・・・っ」



・・・泣いていたのか?


濡れたまつ毛と僅かな涙の跡


泣きながら寝た子供のように
ギュッと握ったままのシーツ


ハァとひと息天井にため息を打つけると


起こさないように少し距離を取って
寝転がった


18歳の小娘のコントロールなど
容易いはずが・・・


現状、奈美だけが頼みの綱


・・・無垢な女は俺には似合わないのか


さっきまで腕の中にいた後腐れ無い女が
一番楽なのかもしれない


巡る想いを誤魔化すように
重くなる瞼が気持ちを楽にした



side out