「陽菜さん!どうしました?
 帯、キツイですか?」



慌てる奈美さんに
頭を左右に振ってみるけれど

落ちる涙と高ぶる感情は止められなくて

更に奈美さんが慌てる


・・・だって私、借金のカタだもの


本当は
皮肉ってそう言おうとした

でも・・・

言えなかった


この想いは・・・・・・なに?


納得しているはずの頭を
打ち消す程の想いが掻き混ぜる


この家に連れて来られてから
靴を履いたことがない


一生、外には出られないかもしれない


それでも良いと自分に言い聞かせてきた日々は

心底辛いものでは無く


碧斗さんから与えられる世界を
空想の中で楽しむことも覚えたのに


「陽菜さんは組長のどこが好きですか?」


奈美さんから突然投げ掛けられた質問に息をのんだ


・・・好き?



誘拐紛いに
連れてこられたこの家で

入籍したのは数週間前のこと

たったそれだけで
人を好きになるはずがない

自由を奪った碧斗を
“嫌い”と言っても良い程のこと

それでも・・・
こんなに痛む胸の理由は?

そこへと繋がっている気がする



・・・馬鹿みたい



それが何か・・・
なんとなく気付いてしまった


それを誤魔化すように
更に溢れる涙が頬を濡らした