家を空けることの多くなった碧斗さん

遅くなっても深夜には必ず帰ってきて

動けなくなる程抱き潰された



執拗な交わりの間に
微かに匂い立つ甘い毒香に


少しずつ痛む胸



借金のカタなのに幸せな結婚を
望むのは贅沢なのかもしれない


でも、確実に胸の痛みは広がっていた



朝は一人で目覚め
用意された洋服に着替える



碧斗さんが留守の間は
奈美《なみ》さんという世話係が何をするのも全て取り仕切ることになった

唯一の女性ということと
話しやすい雰囲気を持つ奈美さんに

最初は警戒していたけれど
気がつけば奈美さんが来てくれることを待っていた


「陽菜さん、今日は華道と茶道の二択を用意しました」


碧斗が居なくても
家から出ることは許されない


退屈な時間を埋める為に
毎日楽しみを与えてくれる


「華道でお願いします」


「ではお着替えから」


両手を広げて立っているだけで
あっという間に着付けられる着物は

碧斗さんが選んだ物だと説明を受ける



「珍しいことですよ?
 着るものまでお選びとは
 陽菜さんにご執心ですね」



そう言ってフフフと口元を隠して笑う



「そんな理由ないですよ
 だって私・・・・・・」



何気なく出した言葉なのに
ズキンと胸が苦しくなり

それは急速に涙腺までも緩ませた