「碧斗、我慢出来ないの」



手を引きながらソファへと誘う


ギシッと革張りのソファが沈むと


「早くぅ」


強請る唇が口付けをせがんだ


「碧斗っ、愛してるわ」


・・・ウゼェ


煩わしさにため息を吐いた






龍神会一ノ組は大澤組が代々世襲で繋げてきた

その慣習から外れたのは
俺の実の親父の所為だ

お嬢様育ちの母親はヤクザの世界を嫌い自殺未遂までおこした

代々続く大澤の血のために誰もが組を取ると思っていたのに
親父は簡単に大澤組を抜けると言い出し

怒った会長から破門の上追放された

その後、俺が組長を引き継ぐまでの繋ぎとして選ばれた佐和は

先代である会長の右腕だった


だから順調にことが運ぶと信じて疑わなかったのに

代替わりの話が出始めると
佐和の舎弟である立花に不穏な動きが出始めた

それを掴んでいたのは情報参謀であるニノ組

ニノ組の送り込んだ刺客の情報から
証拠を掴み資金を押さえた


この世に存在したことを後悔させてやるつもりの腹の内を

無理矢理抑えることにしたのは


ニノ組からの二の矢だった



『佐和は末期癌です』



そう聞いた時の感情は言葉にはならない

それでも

『情けをかけろ』と会長からお願いされると

非情にもなりきれず

夜叉の如く殺気立つ俺を

必死で鎮めた一平に免じて

今までで一番緩い仕置きになった


佐和が亡くなる前から
色仕掛けで迫ってきていた姐さんは

龍神会三ノ組の傘下で小柴組の娘


そして・・・誘うとすぐに落ちた軽い女

不穏な動きの幹部は全て徹底的に潰し
佐和が亡くなった今はもう用済み


・・・そろそろ沈めるか



陽菜と比較的して鼻で笑う

そんなこととは知らない女は
額に汗を浮かべながら妖艶に俺を誘う


「碧斗っ」


赤いマニキュアの爪を自分の肌に立てながら誘ってるつもりだろうが

こんな女に反応する訳がない


・・・どうせ最後だからな


喉の奥で笑いながらその様子を見ながら部屋の入り口に視線を送ると

僅かな隙間から一平が頷いた



・・・気持ち悪りぃ


触れられた身体を洗い流すためにシャワーを浴びて部屋に戻ると


女はソファで若衆に組み敷かれていた


狂ったように喘ぐ姿を見ながら
女に近づくと


驚いたように目を開いた


「あっ、碧斗っ違うのっっ、
 だめっどいてっ、やだあぁぁ」


コントロール出来ないほど完落ちした女を組員達が取り囲んだ