後部座席で携帯に二重ロックをかけ


「連絡するまで控えてろ」


そう言い残すと車を降りた


脆弱なセキュリティを潜り
姐さんの待つ部屋に入った



「遅かったじゃない?」



目の前でワイングラスを片手に薄気味悪い笑いを浮かべているのは
謀反を企てるだけで潰された
繋ぎだった組長の未亡人


「風呂に入ってた」


言い訳する唇を見つめる瞳が
みるみるうちに吊り上がる


「嘘っ、碧斗っ・・・
 小娘と結婚したって聞いたの
 本当・・・?」


「あぁ、それは、借金のカタ」


なんでもないことのように
出来るだけ抑揚をつけずに答えると

ワイングラスをテーブルに置いて
ゆっくり近付くクソ女は


「私がこんなに碧斗を愛してるのに」


鼻にかかる甘えた声を出すと

吊り上げた目を一瞬で潤ませ

直立不動の自分を見上げると
纏わり付いた


「もう抱いたの?」


「最近ちっとも来てくれないから」


「ねぇ、碧斗」


「ねぇ」



背伸びをしながら器用にスーツを脱がす手がウザいが

どうせこれが最後だろうと好きにさせた

明るい部屋で俺を全裸にすると足下へ傅いた



「碧斗」


一人で盛り上がる様子を
どこか冷めた目で見下ろした