「喉が渇いただろ」



僅かに上がった口角が気になるけれど

ティーポットから注がれる
琥珀色の紅茶の香りに
強ばっていた肩の力が抜ける

長い指が角砂糖を摘むと
ティースプーンがカランと円を描いた


「どうぞ」


「あ、りがとうございます」


警戒感を解すような紅茶は
とても香りが良くて甘い


ゆっくり飲み干すと


男はトレーごと床に置いた


そして・・・また

寄り添うように隣に腰掛けると
黙ったまま髪を撫で始めた


逃れられない状況が戻り
落ち込む気分と裏腹な心地良さ


サワサワと拗ねた子供を宥めるような
優しい手の動きに

呼吸がリンクする


・・・暑い


紅茶のせいなのか身体が火照る


髪を撫でる手が滑る度
肌を撫でられたような錯覚に陥り
身体全体が反応を始める


・・・や、だっ


自分で制御出来ない程に
身体が熱く火照り

撫でる手を追いかけるように揺れる


「大丈夫か」


傾く身体を支えるように
背中に回された手


「・・・んっ」


思わず漏れた声に驚いて慌てて口を塞いだ

そんな私の過剰な反応は


優しく触れる手の所為なのか

緊張を解いた紅茶の所為なのか




初めての状況に溺れ始めた身体を
もう自分でも止められなかった