「い、嫌だよ。海琴が居なくなるなんて嫌だよ!!!!」







ほら、こんな私を必要としてくれている。







「けどごめんね。もう決めたことなんだ。」





その希望を捨てる私は私が嫌いだ。





「…今からも考え直さないのか。残り1時間もある。」





1時間”しか”だと思うけど…






これで私はあと3600秒だけ生きていられる。





心臓も3600回しか脈を打たない。






息も1750回だけしか出来なくなる。






けど、それでいいんだ。






「考え直さない。決めたことは絶対に曲げない主義だから。」







私は私。誰にも染められない……
この言葉を呪文のように脳内で再生する。






「…そうか。じゃあ…お別れか。今までありがとうな」






小さい時以来見なかった彼方の泣き顔。






彼氏に振られた時以来見なかった瑠璃の泣き顔。








「ウッ…グスッ…嫌だ…いやだよ…そんなの…生きていけない…お願いだから死なないでよ海琴!!
ずっと守るから!!うちらを犠牲にしでも守るから!!
お願い!!生きて!!うちには…海琴が必要なの…」








私はそんな大きな存在じゃない…







「私は…小さくて、醜く、太陽とは真反対の月だ。」







自虐のしすぎなのかな。自分の価値が分からなくなった。







「そんなことない!!」









最期まで優しいね。瑠璃は。…いや、最期だからか。







「濁った海。汚い琴の音色。」








ポツリと言ってみた。








「…は?」







彼方がポカンと口を開けている。






「本当はね。瑠璃色の海の色の如く凛とした琴の美しい音色のように生きなさいって意味があるんだって。」






名前負けしちゃった人生だな…





「それと?正反対って言いたいの?」


「うん」

「そんなことない!!」

もう…疲れたんだよ…寝かしてよ……









そろそろ…時間…かな?