昼の雨

泣かせた。謝らないと。探さないと。
そう思うが、なかなか広く、屋敷内にいる人も今日に限ってあまりいないので結華がどこに行ったかなんて、そう簡単にはわからない。
とりあえず自室の方に戻ってから探すことにする。
僕の部屋は客間を出てすぐ左の渡り廊下を渡った第2棟の方だ。
これからどうするべきか考えながら部屋まで歩く。



うん。おかしい。
何で僕の部屋にいるんだ。
そして、何故僕の部屋で泣くんだ。
僕がなにかしたみたいじゃないか!
「ねぇ。結華さん…。泣くのやめてくれないかな……。」
不意に結華がさっき言っていたことを思い出す。

『お母さんは悪くない』
『悪いのは声の出ない、意思表示の出来ない私だ』
『誰も何も悪くない』

自分で自分の首を絞めているだけじゃないか。

「さっきはごめん。何も知らないのに、言い過ぎた。あと、さっき君が何て言ったか、全部わかるから。」
そう言うと結華は泣くのをやめて顔を上げた。
「…………」

『わかるの』

驚いた顔を見るのは初めてだったので笑ってしまう。
「ふふ。うんうん。わかる。これで僕と話せるね。」
結華は小さく頷いた。

「ねぇ、さっきの話だけど、あの、再婚の……」
話を切り出すと俯かれてしまった。
「再婚したら、たぶん、君もこの家に住むことになるし、家の中に自分と同い年の異性がいるのって、普通嫌でしょ………」
言うと彼女は首を振った。