昼の雨

母親に目を合わせて続ける。
｢しっかりと子どもの意見も尊重するべきではないんですか。自分の事ばかり考えて行動するのはどうかと……｣

ぱんっ。

乾いた音が響き、部屋が静まる。
見上げれば、いつの間に立ち上がっていたのか、僕のすく横にいた。

沈黙の中、叩かれたんだなと理解した。でも、何故なのかわからない。

｢…………………。｣

｢……え…？｣
結華は口を開き、必死に話す。
僕に向けて、必死に話す。
｢…………………………。｣
声は出ない。けれども、わかる。口の動きを見ればわかる。そして、彼女は怒っている。

たんっ。

言いたいことを言い終えたのか走って客間を出て行く。

｢すみませんでした…。わかった様な言い方をして…。｣
頭を下げる。
｢いいえ…。楓さんに言われて気が付きましたわ……。私、あの子の事、考えていなかっ………｣
結華の母親は泣き出してしまった。
僕は逃げるように、
｢すみません、結華さんを探してきます…。｣
と言って客間を後にする。
後ろで父が僕を呼んだ気がしたが、振り向かなかった。