残念イケメンと愉快なお茶会

その日の放課後の事だった。


「なあ、水原。これ、一階の学習室まで持ってってくれないか?」


担任に呼ばれ、なんだと近寄れば、彼は教卓の上に置いてあるノートの山を指さしてそう言った。


隠すことなく嫌そうに顔を歪めれば、担任は豪快に口をあけわははっ!と笑い、「全くお前は素直だな!」と口にする。


「自分に嘘をつくのは嫌いなので。」


「んじゃ、頼むぞ。」


「今の話の流れでめっちゃ拒否ってたと思うんですけど。」


「あっはっは!」


笑って誤魔化しやがった。そそくさと教室を出ていく担任。教室に残っているのは寂しいことに私だけであった。


このクラス唯一の帰宅部である。他のクラスにはいっぱい帰宅部がいるというのになんたる偶然。


「よいっしょ。」


ひとクラス分のノートを持ち上げると、思わず「重っ。」と顔を歪める。か弱い女子に頼むとはなんたることか。


ポテポテと、「腕もげる~。」やら「おーもーいー。」やら一人言を発しながら学習室へ向かう。


誰か私のこの言葉に同情してくれ作戦である。


「手伝おうか?」


しかしその作戦を考えた私自身、この作戦が成功するなど思いもよらなかった。