手のひらから伝わる温かさにドキドキして、いっそ手汗をかきそうなくらい。
"いち君と手を繋いで歩きたい"
過去、彼に恋して願っていたそれが、今現実となっている。
だけど、隣を歩くいち君はあの頃よりも背が高くなっていて、彼だけど彼じゃないような不思議な感覚だ。
「ところで沙優ちゃん」
「な、なに?」
未だ、この状況に順応できない私はいち君に呼ばれてぎこちなく視線をやる。
彼の瞳はすでに私の姿をしっかりと捉えていて。
けれど、僅かに揺らいだと思えば。
「俺を意識してもらう為にも、これからは沙優ちゃんを呼び捨てで呼んでもいいかな?」
少し気恥かしくなるお願いをされた。
「えっと……いきなりだね」
「そうでもないよ。手を繋ぐのも、呼び捨てするのもずっとしたかったことだから」
俺にとってはいきなりじゃない。
そんな風に言われて、否が応でも心臓は高鳴る。
だって、期待してしまうのだ。
ずっと、だなんて。
彼が昔から、私を想っていてくれたのでは、と。
でも、いきなりいなくなって、連絡ひとつもないことを考えればそれはありえないだろう。
だから、これはリップサービス。
振り回されるないようにと心を落ち着け、私は頷いた。
そうすれば、いち君は「ありがとう」とはにかんで。
「沙優」
続けて、呼んだ。



