いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~



「その顔は嘘でしょ」


少し声を低くする私に、いち君は「バレたか」と小さく笑う。


「ごめん。でも、好きなのは嘘じゃないって思っていいかな?」

「う……」


嘘じゃない、けれど、数時間前まで不機嫌になっていた私としては素直に頷けなくて、彼の横顔から視線を反らした。


「その質問には、いち君の話を聞いてから答えます」

「残念だな」


意地悪だったかなと心配になり、彼を盗み見る。

でも、特に落ち込んでるわけでもなさそうでホッと胸を撫で下ろした。

車の時計を見ると、時刻は間もなく深夜零時を迎えようとしている。

ふと外に流れる夜の景色の中その文字を見つけた私は声を漏らした。


「……伊豆?」


ちらほらと見える宿や店の看板に伊豆と表記されていて、私の声にいち君はそうだよと答える。

やがて料金所を潜り、灯の少ない道を進んでいくとやがて海沿いに出た。

そして、車が停まったのは白い大きな家のガレージ。


「ここは?」


尋ねると、いち君は外から助手席の扉を開けて教えてくれる。


「俺や美波、大地が使ってる別荘」


先週、美波たちが来てたらしいよと話しながら、彼は大きな鉄の門の横についているセキュリティを解除して、門扉を押し開けた。

なだらかな坂のアプローチを歩き、限界まで来るといち君は鍵を差し込んだ。

暗くて確認はできないけど、海が近いようで背後からは波の音が聴こえてくる。