「信じて、くれるかな?」
上目遣いに眉尻を下げる彼から、思わずついと視線を外してしまう。
ここまで細かく説明されて信じないわけじゃない。
疑ってごめんなさいと、謝らなければ。
そう思って唇を開こうとした時、いち君が言った。
「俺は沙優以外なんて考えたことないし」
それは多分、私へのアピールだ。
吉原さんとのことを安心させる為の言葉でもあったのだろう。
だけど、言われたの瞬間に蘇ったのだ。
羽鳥さんが教えてくれた、いち君の犯した過ちのことを。
あの時、濁してはいたけれど、話の流れからいって私を想っていたけれど、他の子にふらっといってしまったとうことだと私は思っている。
もちろん、私だって聖司のことがあるし同じようなものかもしれないけど、今ここでその言葉を選んだことが少し許せなかった。
別の言葉でも良かったのでは、と。
だから、私は謝るのをやめた。
「嘘」
「嘘じゃない」
「羽鳥さんが……少し、話してくれたから知ってる」
過去の話を持ち出してどうなのかと思うけど、私は言わずにはいられなかった。
いち君は何を、とは言わずとも理解したようで、落ち込んで視線を落とす。
「……ごめん。でも、最低だと思われるかもしれないけど、付き合ってたわけじゃないんだ」
暴露してから後悔したようで、彼は顔の上半分を両手で隠しながら「ああ、ダメだ。これじゃ信じてもらえないな」と零した。
正直な言えば、彼が苦しみから逃れる為にしたのなら、仕方ないと思う。
その気持ちはよくわかるから。
ならなぜ、こんなにも腹が立つのか。
考えてすぐに出た答えは、案外簡単だった。



