いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~



だるさもなくなり、乱れていた髪を整える為にベッドから降りたのは午後九時になる頃だ。

いち君のアーン攻撃のあと、また少し横になった私は疲れていたのか寝てしまった。

いち君は一階にいるのか、気配はない。

バスローブのままなのもどうなのかと思い、彼からもらったワンピースに着替えて階段を降りる。

広いリビングを見渡しても、そこにいち君の姿は見えない。

そういえば、ベッドルームは二つあると言っていたから、もしかしたら彼はそこで寝ているのかもしれないと私はリビングの窓に手をかけテラスへと出た。

頭上では、淡く光る星と少し欠けた十六夜の月が優しく夜を照らしている。

鼓膜をくすぐるのは、遠くない場所で打ち寄せる波の音。

太陽も眠るこの時間は、昼間の熱もすでに落ち着き少し肌寒い。

ぶるりと身体を震わせた直後、ふわりと肩から何かがかけられた。

同時に香る、優しく爽やかなフローラルの香り。

驚いて振り向くといち君が微笑んで立っている。


「風邪ひくよ」

「ありがとう」


おそらくいち君のカーディガンなのだろう。

薄手の柔らかな生地を落ちないよう手で押さえれば、彼は「後ろ向いてて」と告げた。