「キミ、一人?」
高級リゾート地のビーチでまさかのナンパにあった。
男性は色黒で、高そうなネックレスや時計を身につけている。
サングラスをかけていて顔はよくわからないけど、話し方はチャラい。
「良かったら俺の船でさ、波間、漂っちゃわない?」
そして、なんてダサい誘い文句。
「結構です」
早い所いち君と合流しようと一歩踏み出すと、相手も一歩踏み出して行く手を遮った。
「いい船なんだよー? 美味い酒も用意してあるし、おいでよー」
「いえ、お酒は得意じゃないので」
苦笑して一歩横にずれてみたけど、どうやら逃してくれないらしく、男性は大して色気もない声で囁く。
「夜明けの地平線、君と見」
「見ません」
いつの間に追ってきてくれていたのか。
水族館の時のように、いち君が割って入ってくる。
しかし前回と違うのは、相手の肩を掴んで強引に私から離したことだ。
彼は私を見ると、小さく溜め息を零す。
「戻ってこないから探しに来たんだ。君は一人にするとすぐ男といるから困るな」
「人を尻軽みたいに言わないでくれる?」
「そんなに俺にヤキモチを妬かせたいのかな」
そんなわけないでしょと突っ込むと、いち君は私の手をとって指を絡めて繋いだ。
そして、王子様スマイルを浮かべる。



