「お疲れ様です」


さすがに社長相手に軽く返せないので笑みを乗せて挨拶をした。


「順調かな?」

「はい、今のところ特に問題もなく」


現在、明倫堂の新作パッケージの他にもう一件ノベルティーデザインの仕事を手伝っているけれど、そちらも滞りなく進んでいる。


「そうかそうか。で?」

「はい?」

「明倫堂の御曹司様とも、順調かな?」


ニヤニヤと探る社長は、いち君が来社して以来ずっと私といち君の関係を疑っていた。

いや、社長だけじゃない。

事務の子も『真山さん、最近お洒落してますよね。男ですか? もしかしてあの明倫堂の王子様とですか!?』と、ランチの時に怪しんできたし、仕事上、いち君とも少ながらずやり取りを交わしているディレクターも『あの王子様は真山のこと好きなんじゃないか?』と何を見たのか聞いたのか。

勘ぐって楽しそうに私の様子を伺っていた。

ちなみに、いち君と付き合うことになったのはもちろん誰にも話していない。

会社に関係ない友人や親にも言ってない。