「似合ってる。可愛いよ」
「ありがと」
恥ずかしい。
ホテルのロビーで向かい合ってベタ褒めされて、居たたまれない。
気づけばフロントのお兄さんとか、少し離れたソファーに座ってる年配のご夫婦とか、めちゃくちゃ温かい目で見守ってるし。
「え、えっと、そろそろ行く?」
早く見る場所を確保しないといけないのもあるけど、この場から離れたくて促すと、いち君は「そうだね」と頷いて、なぜかロビーの奥に向かう。
「いち君、扉は反対だよ」
声をかけて引き止める私に、彼は振り向いて微笑んだ。
「こっちなんだ」
そう言って、エレベーターホールを指差す。
いち君はそのまま柔らかな照明が照らす落ち着いた雰囲気のホールへと足を進めた。
私は戸惑いながらも彼の後をついていく。
エレベーターに乗ると、いち君が押した階数は高層階。
そこは、ハイクラスの部屋専用のラウンジがあるらしく、エレベーター内の案内板にはレストランやバーの表記も見れた。
もしかしてレストランで夕食を食べながら、とか贅沢な観覧になるのかと、恐縮し肩をすぼめ高級そうな内装のラウンジを歩く。
しかし、微笑みを浮かべたいち君の足はまたもや私の予想と違う方向へ向かった。



