約束の時間までまだ十分ほどあり、どう過ごしていようかと悩む。
ふと思い出しのは、前回の映画デート後、いつも届く花束と手紙がなかったことだ。
忙しいのか、忘れているのか。
彼にも色々と都合があるだろうと、すこし気になりながらも顔を上げれば。
「沙優、早いね」
いち君が、軽く手を振りながら現れた。
しかも、浴衣姿で。
これは完全に不意打ちだ。
彼が昔住んでいた家が洋館風だったからか、あまり和のイメージがなかった。
だから、浴衣を纏ういち君に私の胸の鼓動は跳ねっ放しだ。
私は立ち上がって彼を迎える。
「いち君、浴衣凄く似合うね」
凸凹感のある素材の浴衣は、黒地だけれど所々に白が織り混ざっていて重たく感じさせない。
というより、着ている彼が爽やかな好青年なので清涼感がある。
どこかの浴衣モデルさんかと思うくらいで、素直に褒めるといち君は照れ臭そうに頬をかいた。
「ありがとう。でも、沙優には敵わないな」
いやいや、どう見てもいち君に軍配があがるから。
男女の違いはあれど、どちらが浴衣を上手く着こなしているかアンケートを取れば、間違いなくいち君が勝つだろう。
だけど。
「沙優はセンスがいいよね。デザインの仕事に就いたのもわかるよ」
「そ、そうかな?」
仕事のことを絡めて褒められたら素直に嬉しい。



