「送っていく。車回すから、ここで少し待ってて」
「え、でも駅近いし」
「俺が沙優と一緒にいたいんだ。だから、沙優は俺のワガママに付き合って」
いち君の優しいワガママに、私は苦笑いして頷いた。
ありがとうと伝えると、いち君は駐車場へと足を向ける。
彼の後ろ姿を見送りながら、そういえば、ブライダルベールの花言葉は【花嫁の幸福】や【願い続ける】というものだったのを思い出した。
花も花言葉も、どちらも彼からのメッセージなんだろうなと多くの人が流れる街を眺めていたら。
「……ん? あれって……」
交通量の多い道路の向こう側に、機嫌良さそうに笑みを零しているいち君のお父さんである東條社長を見つけた。
女性も一緒で、デートだろうか……と、見てはいけないかもしれないので慌てて視線を逸らしたけれど。
寄り添う親しげな女性には見覚えがあり、誰だったかとまた視線を戻す。
やはり随分親しげだ。
もしかして再婚とか、するのだろうか。
でも相手の女性、私と同じくらいの年齢だ。
と、そこまで考えて思い出す。
東條社長を見つめるその女性が、打ち合わせの時に見た、秘書らしき人だということを。
いち君の会社は東京にある。
もしや、横浜ならデートしても早々知り合いに見られることはないだろう、なんて考えて会ってるんだとしたら。
やはりこれはますます見てはならない現場なのだと急ぎ背を向けた。
その直後、いち君の運転するスポーツカーが停車する。



