「そうなんですね! 実は私の従姉妹も御曹司に見初められて、昨年結婚したんです。どこにそんな出会いあるんだよって思ってたんですけど、あるところにはあるんですねー」
羨ましいと笑って、高梨さんは次の配達先へと急いだ。
扉を閉めて、花束をテーブルに置く。
御曹司との結婚、か。
そういえば、中学の時に友達に玉の輿だねとか言われていち君との仲をからかわれたことあるけど、当時はあまり深く考えたことなかったなぁ。
私にとって重要なのは、いち君と一緒にいれることだったから、今思えば本当に純粋に恋していたのだとわかる。
大人になった今、色々なしがらみができて、色々なものを見てきたせいで、変に悩んでしまうようになった。
早く大人になりたい。
そう思っていたはずなのに、今は少し、いち君の隣でいち君に恋をしていた過去の自分が羨ましい。
自嘲気味に微笑んでから花束に挟まれた手紙を取り出し、少しざらつきのある白い封筒を開いた。



