どうやらいち君はこの花屋さんが気に入ったらしい。
「真山さん、愛されてるんですねー」
先週お花を届けてくれた女性が再び私に可愛らしい花束を渡してくれた。
ピンクのバラに、小さな葉と小ぶりな白い花。
前回聞いた気がするけれど、名前を忘れてしまった私は彼女の胸元にある名札を確認。
そこには【高梨】と記されている。
「あの、高梨さん。この花はなんて名前ですか?」
私が指差したのは、白い花の方だ。
実は今までもらった花はすべて一種類のみで届けられていた。
でも今回は二種類できている。
バラは知っているけれど、白い花はわからないので念のために確認してみた。
高梨さんは明るい笑顔を浮かべる。
「これはブライダルベールですよ」
ブライダルベール。
昨日『君しかいない』とか『一番になればいいのに』とか言われてるし、花の名前はブライダルだしで、花言葉とかではなく直球で来たようにも思えるけど、それはさておき、言われて見れば、確かに白いベールのイメージが沸く花だ。
カスミソウに似ていて可愛らしい。
そして、本日もいち君からの手紙が挟まれているのを確認したところで、高梨さんが受領証を差し出しながらおずおずと聞いてくる。
「あの、うちのオーナーが言ってたんですけど、送り主の東條様って御曹司なんですか?」
「え、ええっと、そうですね」
私にはあまりいち君が御曹司という意識がなく、どちらかといえば初恋の幼馴染という印象が強いので、改めて聞かれると戸惑ってしまう。
あ、そういえばそうだった、と。



