「もしもし」
『おはよう、沙優』
「おはよ。てか、まだ朝の八時前だよ」
『モーニングコールよ』
日曜日なのに迷惑だよとは言わず、私は「で、用件は?」と話を促した。
『はじめ君とのことよ。あれからどうなの?』
「まだ、決めてない」
『まだなの!? はじめ君よ? あなた好きだったでしょう?』
「そ、うだけど、それは昔の話だし」
まさか、母から私の想いを口にされるとは思わず狼狽えていると、急に電話口の母の口調が厳しいものに変わる。
『ダメよ、結婚しないさい。はじめ君はね、沙優と一緒になりたくて頑張ってきたのよ。それを無駄にするつもり?』
叱るように私の背中を押す母だけど、私の心が動いたのは別の方向だった。
「……ママ、何か知ってるの?」
『あらやだ、あなた知らないの?』
「まだ教えてもらってない」
きっぱり口にすると、母の態度がまたもや急変。
『あらあらあら。じゃあ、頑張ってね。結婚してねー』
「あ、ちょっと! ママ!」
電話なのをいいことに、母は流れるように言いたいことだけ告げて逃走した。
私はスマホを軽く睨みつけてからベッドに放る。



