キッチンで料理を盛り付けながらふとその指先を目にして、いち君と一緒に働く彼女たちの華やかな指先を思い出した。
昔、彼は学級アンケートで「好みの女の子は優しい子」なんて答えていたけれど、彼女たちのような女性に囲まれていたら、好みのタイプとかも変わるのかな。
優しくて、自分に気を使えるオシャレな子、とか。
やっぱり、もう少し自分を着飾るべきだろうかと悩みながらダイニングテーブルに料理を並べれば、いち君はとても喜んでくれた。
味もどうやら問題ないようで、私も一安心しながら味わった。
そして──
「デザートもあるから、ちょっと待っててね」
空になったお皿を片付けて、冷ましておいたそれをいち君の前に置いた。
「……これ、もしかして」
彼の瞳が、大きく見開かれる。
「そう、いち君のお母さんのだよ」
今日、いち君を誘った目的であるこのデザートは、彼のお母さんが時々作ってくれたりんごのタルトタタン。
昔、これが好きだといち君が言っていた。
実は私も気に入って、レシピを教えてもらったことがあったのだ。



