契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました

夕方、病棟回りから戻ってきた小沼さんが、首を傾げながら私の耳に顔を寄せた。

「相沢さん、上村先生が6時に休憩室に来てほしいそうです」

「え?」

「外科から内科に移る患者さんの食事の相談ですって。
珍しいですよねえ、先生から言ってくるなんて」

腑に落ちない顔をしている小沼さん。

昨日のこともあるし、嫌な予感がする。

だけど、食事相談なのであれば無視するわけにもいかない。


「失礼します」

6時ちょうど、おずおずと休憩室へ入ったら、中には上村先生の他にも数人の先生がいた。

安堵しつつも上村先生の元へ向かおうとしたら、先生は立ち上がって、すれ違いざま「こっち」と小声で言って外に出ていった。

「どこに行くんですか?」

その背についていきながら問いかけるけど「内緒」とだけ言って教えてくれない。

先生は周りを気にしながら、院内の小さな図書室のドアを開けた。

ここは職員専用で、看護師や医師向けの参考書がたくさん置いてあり、表向きは六時以降出入り禁止になっている。