女将が横からそっとテーブルに置いた湯葉のお吸い物は、手まり麩と緑の葉が添えてあり、上品な香りが食欲をそそる。

こういうときにまず彩りをチェックするのは完全に職業病。

これが病院食の献立を考えるときに役に立ったりするのだ。

続いてお寿司が届き、嬉々とした声で室内が沸く。

「私、回転寿司じゃないお寿司初めてです…」

つい呟いたら、神田先生はまた豪快に笑った。

「今度連れて行ってやるよ。高級寿司屋でも高級ホテルでも」

ホテル!?

戸惑った私は市川さんのほうをちらっと見たけど、市川さんは慣れたように

「先生、もう酔い気味じゃないですか」

と手を折り曲げて愛想笑いをした。

実際、神田先生の顔はもう真っ赤で、会が始まったばかりの頃よりもずっと上機嫌になっている。


セクハラ発言はお酒が進むにつれてどんどんエスカレートしていったけど、市川さんのフォローもあり、なんとか飲み会は無事終了した。