しばらくして悠さんから連絡が来て、車に乗り込み一緒にマンションへと向かった。

「一応顔が見えないように隠れて」

悠さんの言葉に従って顔を低く屈めたから、マンションの前にまだ彼女がいるかどうかは見えなかった。

地下駐車場の入り口はエントランスの真裏側にある。

地下から専用の鍵を使ってマンションの中に入り、エレベーターで直接部屋のある階まで行くことができるのだ。

「もうマンションの前にはいなかった。
中に入ろうとしても警備員に止められるから大丈夫だと思うけど」

私たちが住む三十二階の廊下には当然誰もいなくて、私と悠さんはほぼ同時に安堵のため息を吐いた。

「風間先生って呼んでたけど、元患者なんですか?」

「ああ、前に風邪をこじらせてうちの病院に入院したことがあるんだ」

悠さんは腕を組んで眉を寄せる。

「警察は…」

「あてにならないよ。女性がストーカーされてるのとはまた違うからな」

「そんな…」

「対策を考えなきゃいけないな。
凛になにかあったら大変だ」

真面目な顔をしてそんなことを言う悠さんに、またキュンとさせられる。

警察があてにならないなら、私が悠さんを守る方法は何かないのかな…