「相沢さんは糖尿病や誤嚥性肺炎に詳しいから、内科病棟から外れてほしくないのが正直なところよね。
私が6Aの師長に相談してみましょうか」

「それが、師長もほかの看護師と同じ状態で…」

病棟から事務室に戻る途中、6Aの師長と廊下でばったり会った。

師長なら相談に乗ってくれると思って声をかけたけど、彼女は視線も合わせず足早に私の横を通り過ぎてしまったのだ。

「そうなの?全く…いい大人がなに考えてるのかしら。芸能人じゃあるまいし」

課長は頬杖をつきながら眉を寄せた。

そんな課長も、結婚の報告をしたときは芸能人の話題並みに頬を紅潮させて黄色い声をあげていたけど。

「じゃあとりあえず今日は俺行くよ。内科病棟はあんまり詳しくないけど、ファイル貸して」

「いいの? 北川」

「その代わり、三時からの栄養指導一件変わって」

「うん……ありがとう」

ファイルを受け取った北川は、中のカルテに目を落としながら事務室を出て行った。