「…昨日のこと、先生は本気で言ってるんですよね?」

「ああ」

「私は何の取り柄もない平凡な女です。ズボラだし、料理も下手だし…
先生の中身を見て好きになる女性だって、ちゃんといると思うんです。
…なのに、私でいいんですか?」

自虐のようになってしまって情けないけど、私より素敵な女性なんてごまんといると思う。

結婚相手に私なんかを選んでいいのか、きちんと確認しないと。

「君に昨夜言ったことは変わらない。
今のタクシー代のことで、ますます君の真面目さが伝わった。
契約結婚と言えど、君を幸せをできるように努力したいっていう気持ちは本当だ。
信用には足りないか?」

からになったお皿を見つめながら、今先生が言ったことを何度も頭の中で反芻する。


紙切れ一枚でも、結婚というからにはそれ相応の覚悟は必要だ。

決してお見合いから逃れたいという理由だけじゃない。

きっかけはそうだけど、風間先生の人柄は私なりにわかっているつもりだし、尊敬しているのも本当だ。

尊敬できる相手と結婚するのは、その場の恋愛感情で盛り上がって結婚するよりもずっと冷静で、ずっといい選択なんじゃないかと思った。