「これから先、薬を飲み続けるのはもちろん、食事の塩分制限、軽い運動制限が出てくる。
毎日血圧を測り、通院や定期的な検査。
後遺症として慢性心不全になった場合、重い患者はペースメーカーをつけることもある。
医学が進歩しない限り、一生この病気の影はつきまとっていくかもしれない」

「そうですか…」

ここ数日、私はテレビ台の引き出しに入っていたたくさんの同意書を見た。

わからない専門用語は自分で調べ、自分がどれだけ深刻な状態にあったのかを思い知った。

あのまま死んでいてもおかしくなかったと思う。

生きていられただけでも…悠さんと仲直りできただけでも、感謝しなきゃ。

「…はい。私は自分の病気を納得して受け入れます。
だけど…」

…だけど。

現実を受け入れたときに思ったのは、この先私は悠さんの重荷になってしまうかもしれないんだということ。

悠さんに迷惑をかけたくない。

悠さんの負担になりたくない。

離婚は当然の選択だと思った。


「悠さん、私…」

「ここからは、ひとりの人間としての話」

私の声を遮るように、強い口調で悠さんは言った。