しばらくして、病室に入って来たのは悠さんだった。

「凛!」

私の髪の毛をよけ、頬に触れたその手は、私の冷たい頬を心地よく温めていく。

「悠さん…」

酸素マスクのせいでくぐもった声になるのが歯痒い。

それを察したらしい悠さんが酸素マスクを外してくれて、口元が楽になって涼しい空気に触れた。

「しばらくつらい治療が続いて、眠ってもらっていることも多かったけど、起きていた時のことは覚えてるか?」

「いえ、ぼんやりとしか…」

「痛いところや苦しいところは?」

「大丈夫です」

あれから何時間経ったんだろう?

私は何の病気だったんだろう?

循環器内科の病棟にいるってことは、循環器系の病気…?

私が指導するはずだった患者さんは、誰かがちゃんと代わってくれたのかな。

私が回るはずだった病棟にも、代わりの人が行ってくれたのかな。

私の顔に不安がばっちり出ていたのか、悠さんはベッドサイドの椅子に座って、私の理解が追いつくように、ゆっくりと間を置きながら話し始めた。