突飛な言葉に頭が混乱を起こし、全く理解が追いつかないのに、先生はおかまいなしに続ける。

「まず俺のメリットを言わせてもらう。
俺は今年三十四になる。周りは結婚結婚と急かしてうるさい。
結婚すれば煩わしい女性からの誘いもなくなるだろうし、体裁もいい。
君が俺に対して顔で寄ってくるような女性じゃないことはわかってるから、君とならうまくやっていけると思う」

「…なんで私が顔で寄ってくる女じゃないって思うんですか?」

「君は仕事仲間をそういう目で見ないだろ。一緒に仕事をしてればわかる。
少なくとも、猫撫で声で寄ってくるような女性とは違う」

…確かに、私は仕事が好きで、仕事をするために仕事に行っていて、そこで恋を見つけようとは考えたことがない。

ゆえに、職場と自宅の往復ばかりの私は、恋とは縁遠い生活を送っている。

先生は淡々とした口調で続ける。

「そして俺が感じてる君のメリット。
まず、見合い相手との結婚からは解放される。これが今早急に対応すべき問題だな。
そしてうちの病院を辞める必要もなくなるし、一人暮らしをしてるより経済的に潤う」

なるほど、と思ってしまう私はそうとう酔っているんだろうか。