「NST、やりづらくならないようにちゃんとフォローするから、今日のことは気にするなよ」

副リーダーである風間先生がそう言ってくれると心強い。

…だけど、それ以前に私は…

「…NSTには…今の病院にはもう長くはいられないと思います。
来週、地元の長野でお見合いすることになってて…
母は結婚させようと必死だし、相手とは少し面識があって、もう半分決まったようなものなんです」

言わなくてもいい個人的な事情がポロッと出てしまったのは、自分ではどうすることもできないこの状況を、お酒のせいにして誰かに聞いてほしかったのかもしれない。

「本当は、ずっとここで働き続けたかったんですけどね」

ふふっと苦笑いをしたけど、先生は反応を返してくれる様子もなく、やっぱり余計なことを言ってしまったとすぐに後悔した。

だけど先生は、ピタッと歩みを止めたと思ったら、壁際を歩いていた私の行く先をふさぐようにトンっと手をついた。