身体中がガタガタと震えて立ち上がることができない。

いつのまにか小沼さんも出てきて、状況を見て戸惑っていた。

「コードホワイトを!」

暴れる春田さんを何とか止めようとする北川が小沼さんに言った。


『コードホワイト、コードホワイト、栄養指導室』

少ししてアナウンスが流れ、暴れる春田さんの元へ警備員や男性職員がやってくる。

私は何もできずに呆然とそれを見ていた。

「凛!」

パニックを起こしている頭の中に、耳慣れた声が届く。

「…悠さん…」

駆けてきた悠さんは、しゃがみ込んで私の肩を抱き寄せた。

「…大丈夫だ。ゆっくり深呼吸しろ」

悠さんの白衣にぎゅっとしがみつき、なんとか呼吸を整える。

いつの間にか事態が収束したらしく、春田さんの声はもう聞こえない。

「相沢!」

「相沢さん!」

悠さんの声はちゃんと聞こえるのに…

北川と小沼さんもちゃんと近くにいるはずなのに、どうしてだろう。

2人の声はすごく遠くから聞こえている感覚に陥る。

「相沢さん、顔が真っ青…」

「大丈夫だ。空いてるブースをひとつ貸してくれ。
あとの栄養指導の患者は頼む」

「はい」

悠さんに支えられてなんとか立ち上がり、1番ブースへ移動した。

ブースの壁に寄りかかり、悠さんは私を抱きしめて、子供をあやすように背中をポンポンと叩いた。

「…もう大丈夫だ。怖くない。俺がいる」

悠さんの言葉は、魔法のように私の身体をすうっと楽にしていく。