4つあるブースの2つは、それぞれ北川と小沼さんが予約患者の指導で使っている。

私もその中の1つのブースに彼を案内した。


「管理栄養士の相沢と申しま…」

「いいから早く始めろよ!」

「は、はい」

「ったく、時間通りに始まらねーのかよ」

今は9時32分。確かに少し遅れてしまったけど…

初っ端からこんなに苛立たれると、30分の栄養指導時間持つ気がしない。

「栄養指導は初めてですね。
医師の指示では塩分5g制限ということですが、カップの焼きそばだけでもメーカーによっては1食5g以上に…」

「なんだそれ!それじゃ何にも食べられねーじゃねーか!!」

あまりの怒鳴り声に身体が固まる。

「大体なんなんだよ栄養なんとかって!それで治るわけじゃねえんだろ!?
一生治らねえってネットで見たぞ!?
なのに好きなものも食べれねえのかよ!!」

「…これ以上腎臓に負担をかけないという意味では…」

「知るかそんなもん!」

机をバンっと叩く音に、頭が真っ白になった。

思わず立ち上がって後ずさったら、壁にぶつかってそのまま座り込んだ。

「なんで俺ばっかりこうなるんだよ!!俺が何したって言うんだよ!!」

「相沢!?」

あまりの怒鳴り声に、隣のブースにいた北川がやってきた。

座り込んでいる私と春田さんを交互に見て、状況はすぐにわかったようだ。

「落ち着いてください!」

「落ち着け?何様だお前ら!医者でもないくせに!」

制止する北川を振り切り、春田さんは今度は自分の座っていた椅子をテーブルに投げつけた。