契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました

「…ごめん、凛。契約結婚なんて嘘だった。
メリットなんて並べ立てて、本当は凛が見合いをして誰かのものになるのが嫌だった。
俺は凛が欲しかっただけだった。
最低だろ。殴ったっていい」

自嘲しながら消え入るような声でそう言い、その姿は泣きそうにすら見える。

こんなに弱々しく、余裕のない悠さんは初めて見た。

「本当ですか…？」

私の声が震え、ハッとしたように悠さんは顔を上げて私の両肩を掴む。

「凛、本当に悪かった、俺は…」

ひたすらかぶりを振った。

「違う…そういう意味じゃないです。
最初は契約結婚だって割り切ってた。
だけど、悠さんの本当の愛は手に入らないっていうことがいつの間にか苦しくなってた。
これは偽物の幸せでしかないんだって、悲しくて…」

ボキャブラリーがなくて説明が下手くそな自分がもどかしい。

だけど、一番言いたい言葉はとてもシンプルだ。

顔を上げて、じっと悠さんを見つめた。

伝えたい思いが、真っすぐ伝わるように。

「悠さんのこと、いつの間にか好きになってたんです」

悠さんは目を見開いて、私の頬をつたう涙を長い指で掬い取る。

「…本当か？」

大きく頷いたら、悠さんは私を強く抱きしめた。

「凛…悪かった。どっちにしろ苦しませてたんだな」

悠さんの腕の中で首を横に振りながら、背中に手を回してシャツをぎゅっと掴んだ。