帰ったらもう十一時を回っていて、寝ている悠さんを起こしたら悪いと思ったけど、リビングにはまだ明かりがついていた。

「ただいま」

「…おかえり」

ソファにもたれかかっていた悠さんは、私に目を向けることなく答えた。

「楽しかった? 飲み会」

「はい」

「誰と飲んでたんだ?」

「言いませんでしたっけ? 栄養科の飲み会で」

「そのあとは?」

「え?」

「そのあと誰といた?」

たたみかけてくる悠さんに戸惑った。

閉口したら、悠さんは立ち上がって私を壁に追い詰め、逃がさないとでもいうように両脇に手をつく。

「車で帰る途中、駅のそばで凛が男と2人で飲み屋街に歩いていくのを見た。
多分、NSTの北川くんだろ?」

「…それは…」

酔いでうまく回らない頭がパニックを起こす。

あんなところをタイミングよく見られているなんて思いもしなかった。

「ちゃんと説明してくれ」

射抜くような視線にとらわれて動けない。

どうしよう。悠さん、すごく怒ってる…

焦って言葉を探す。