契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました

「幸せなんだろ?」

「…幸せだよ」

「じゃあそんな顔すんなよ」

「そんな顔って?」

「相沢、泣きそうじゃん」

じわっと涙が滲んでいく。

おかしいな。泣き上戸じゃないはずなのにな。

慌てて目を拭う。

「喧嘩でもしてんの?」

「違うよ。でも、夫婦間にだって色々あって…
泣きたい時もあるの!」

「まだ新婚だろうが。
マリッジブルーか?」

北川は笑いながらモヒートのグラスをカランカランと音を立てて揺らす。

ジャズミュージックが流れる中、黙っている私に北川は何も言わない。

ジントニックをごくりと飲み干した私は、手を上げて声を張る。

「次!モスコミュールお願いします!」

「あーもうっペース早いっつーの!
すみません、ウーロン茶もお願いします!」

「かしこまりましたー」

北川に制止される私を見ながら、カウンターの向こうで店員さんが笑って返事をした。