16% jsdr

隆平は何も言わなかった。潤んだ目、深い息づかい。無視して話し続けた。

「駿平、辛かったんだよね?なんであたし気付いてあげられる場所にいなかったんだろう……。ねぇ、りゅうちゃん?あたしもう嫌だよ。大切な人がいなくなるのは嫌だ」

実感もないくせに涙が出たのは過去の光景の所為。
りゅうちゃんに抱きしめられた。鼻をすする音と涙の温度。晴天から太陽の日差しが眩しかった。今までずっと黙っていた隆平が口を開いた。

「駿、頭わりーだろ?高校受験、アイツ失敗してたんだ」

あたしが知らなかったことがどんどん押し寄せてきた。
隆平は続けた。

「高校も途中でやめて、就活とかバイトしてたけどそれが辛かったみたいだ。麻衣は悪くないよ。俺とか母さんとか父さんも気付けなかった。アイツ……」

辛かった。
あたしも駿平と出逢ったばかりの頃、辛かった。あたしは駿平に救われたのに、あたしは駿平を救えなかった。
あたしは悪くない?違うよ、誰も悪くない。

「行こ」

少し落ち着いてから声を掛けた。隆平は黙ったまま腰を上げて車のロックを外した。また駿平の家を目指した。