バラしたことで
何志先生は結華に
ちょっかいを出さなくなり
煤木野先生も結華の実家に
行くこともなくなった。

しかし、そんな平穏な日々が
続いたのは
僕にとっては三ヶ月だった。

何故かというと、
結華が女子生徒から
告白されているところを
偶然、見てしまったからだ……

自慢じゃないけど
僕もそれなりにモテる。

だけど、生徒から
告白されたことはなかった。

痛む胸を押さえて
その場を離れた。

結華が断るのは
わかりきっているのに
胸の奥がザワつく……

先に家に着いた僕は
モヤモヤした気持ちを
払拭させるために
料理を始めたはずなのに、
元来、マイナス思考の僕は
嫌な想像ばかりしてしまう。

大丈夫、大丈夫。

結華は僕のところへ
帰って来てくれる。

早く帰って来ておくれ……

二時間後、玄関が開く音がした。

『柚夜、ただいま』

『お帰り』

声が少し震えてしまった。

『どうされたのですか?』

気付いちゃったんだね。

『君、昼休みに
女子生徒から告白されてただろう?』

少し収まっていた
胸の痛みがジワジワと
戻ってくる感覚に
顔を歪めた。

そして、結華から目を逸らした。

俯いたまま、
僕は洗面所の方を指した。

意味がわかったのだろう、
結華は無言のままそっちへ向かった。

次に戻って来た時には
着替えを済ませていた。

『見ていたのですか?

ちゃんとお断りしましたよ。

あなたという旦那さまが
いらっしゃるんですから』

結華の《旦那さま》
という言葉で顔を上げた。

恋人でもなく彼氏でもなく《旦那》。

『そうすると、
結華は僕の奥さんだね』

僕には勿体ないくらいのいい奥さん。

『浮気しないでくださいね?』

冗談ぽく言って首を傾げた。

『僕は一生
結華だけだから心配ないよ』

この時、僕は一つ
隠し事をしていた……

『私も誰から告白されても
柚夜だけですから、安心してください』

僕の手を引いて
ソファーへ座らせると
膝の上に乗っかってキスしてきた。



事後、隣で眠っている
結華の寝顔を見つめていた。

小さくくしゃみをした結華に
布団を掛けて僕も眠ることにした。

このぬくもりが
ずっと此処に
在りますようにと祈った。


―夜中(結華side)―

今日の柚夜は自信なさげでした。

普段の彼なら
私が告白されたくらいで
あんなに落ち込んだり
しないはずなのですが
何か思い悩むことが
あるのでしょうか……?

抱かれている間は
気にしないように
していたのですが、
目が覚めてしまった今は
隣で寝ている柚夜を
起こして問い詰めたく
なってしまいます。

ねぇ柚夜、言ったじゃありませんか。

あなたを愛していると。

自信を持ってください。

そして、悩み事があるのならば
私に話してください。

横を向いて寝ている
柚夜の額にキスをしてから
もう一度眠りにつくことにしました。