とうの昔、僕は心に鍵をかけて閉ざし
その鍵はもう必要ないと捨てた。
だから開くはずはないのに・・・

君は僕を好きだと言った。
久々に感じた暖かい感情。
疑うことも忘れるほど
君の目は綺麗だったから。

君は優しい。
だけど時々、君が分からなくなる。
君の言動はいつも心をかき乱す。

春、桜の咲き誇る季節に出逢った君は今
こんなにも簡単に僕の心の扉を
開けてしまった。

キミはダレ?

月日は流れ、ある日突然
君の姿が見えなくなる。
花びらが散ったあとの
この桜の樹のように

雑踏の街中
気づけば君を探していた。
君の笑顔が鮮明に脳裏に蘇る。
「僕も君が好きだ」
今なら、素直に言えそうな気がするのに・・・。

君は春風とともに消えていった。

あの人は幻だったのだと
自分に言い聞かせ
諦めかけていた時
風が優しく通り過ぎて
一枚の桜の花びらが
ゆっくりと
僕の手のひらに
舞い降りた

「来年になれば、きっとまた会えるよ」
そんな君の声が聞こえた気がした。