END OF THE WORLD






「…あったまる」


思わず独り言を漏らしてしまうほど、王宮の浴場は気持ちがいい。

しかもこんな昼間から浴場に入っている者はおらず、独り占めをしているからか、気分は些か良いものだ。


この王宮の大浴場を使える人間は限られていた。王直属の部下、軍属。庭師やシェフは別の風呂が与えられている。

シロにとって何故分かられているかは全くもって分からないのだが、貧民街出身の自分がこんな良いところを使わせてもらえてるなんて笑える。

透明な水を救って目に映るのは、女のものとは思えない豆で硬くなった手の平。剣を握るしか守り方を知らない自分には、お似合いの拳だ。


「シロ?」


----かなり油断をしていたらしい。



湯気の奥、そこに居た人影に全く気づかなかった。



驚いたようにこちらを見つめる蒼の目。
濡れて掻き上げられた黒髪。


「ばっ、な、!!アベルっ」


なんでここにいる!!

シロは慌てて後ずさる、が、むしろ詰め寄ってくるアベルに悲鳴をあげた。

「セクハラですよっ!」

「先にここにいたのは俺だ!」

「分かったから詰め寄ってくるな!」


バシャバシャとはしたなくお湯が飛び散る。どうにも動きにくい水の中だが、膝を伸ばせば裸体が丸見えになってしまう。

もはや水の中をもがくしか投げられなかった。


「アベル!分かった!一回止まってください!」

「お前が逃げるからだろう!」

「当たり前でしょう!わかりました、止まるので!アベルも止まって!!」


必死に訴えれば、追いかけてくるアベルの動きが止まった。シロは冷や汗と激しい動悸に
襲われていたが、きっとアベルはこの状況を楽しんでいる。その証拠ににやにやしながらこっちを見ているのだから。

(ほんとからかい好きが過ぎる……っ)


タオルを纏っていたから良かったものの、もし何も隠すものがなければ気絶していたと思う。


「…すみません、思わず取り乱して呼び捨てしてしまいました」

「俺はあっちの方が良いんだが」

「黙ってください。上司がやすやすと部下にそんなこと言うもんじゃないですよ」

「真面目だなあ、シロは。」


どの口がそれを言うんだか。